資源管理推進派は、早どり競争を抑制するために、漁獲枠を個別配分すべきであると主張してきた。一方、反対派は「ITQを入れると、大企業が資源を独占し、地域漁村文化が破壊される」と主張している。たとえば、水産庁の有識者会議の出席者は次のように述べている。
須能委員:
私は日本の漁業者の精神構造は、基本的には多神教である。一神教の外国人の価値観とは違っており、地域を守ろうとする団結心をこういうIQ・ITQなんかで精神構造を破壊するようなことは絶対にしてほしくない。譲り合って、助けていくという日本独特の文化として、あるいは漁業文化として、あるいは水産文化として是非維持してほしいと考えます。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_yuusiki/pdf/giziroku_05.pdfのP18
本当にITQを導入すると、地域を守ろうとする多神教的な団結心が破壊されてしまうのだろうか。ITQが地域漁村コミュニティーにあたえる影響をこの目で見るべく、特派員はニュージーランドの離島を訪問した。

今回、訪問したチャタム島は、NZ本島のはるか東に浮かぶ孤島です。NZ本土から、40人載りの小型飛行機が週に2便でている。約2時間半のフライトであ る。島の住民は570人。この島の主な産業は漁業と畜産。国から島に出る補助金は全くない。ITQが小規模漁村コミュニティーにダメージを与えるなら、この島が最初に淘汰されただろう。しかし、事態は全く逆なのだ。ITQのおかげで、漁業が利益を生み、島の生活が成り立っているのである。
島に着いたら、まず、先住 民の部族に立ち寄ることになった。マオリよりも前から島に住んでいたモリオリ族が、遠方からの客人を歓迎したいというのだ。会場に着くと、部族の女性が出迎えてくれた。セレモニーは女性を先頭にして、訪問するのがルールとのこと。 戦争ではなく、平和を求めているという意思表示だそうだ。いざセレモニーになると、それぞれのグループのリー ダー(男)が儀式をする。ここでは女性は一歩下がった場所で、発言も許されていない。一通り、儀式的なやりとりが終わった後、鼻と鼻をくっつけて、 挨拶をして、セレモニーは終わり。手作りのケーキや、アワビなどで、ウェルカムパーティーをしてもらった。とてもアットホームでした。子供たちが元気で、とてもかわいかったです。
島には水産加工場が一つあります。ここも実にアットホームでした。音楽を聴きながら、まったりと作業をしています。日本の加工場では、熟練した作業員が一心不乱に作業をしているのですが、全く違う風景ですね。これぐらいのゆるさなら、俺でもつとまるかも。しかし、マッスィーンのごとく働く日本人よりも、NZ人の方が、労働時間が短く、賃金が高いのです。日本のデタラメな水産行政のツケは、すべて末端が背負っているのです。
あいにく、滞在期間中は、時化で漁がなかったのです。時化といっても少し風がある程度。「えっ、この程度で時化なの??」と驚きました。以前は、これぐらいの天気なら漁にでていたそうです。ITQになって、無理に獲る必要がなくなったので、天気が悪い日は休むようになったとのこと。
島 の主要な漁業は、アワビ(paua)、ロブスター(crayfish), Blue cod (アイナメ)、Kina(ウニ)である。アワビの漁業者の93%がITQを支持している。ロブスターの漁業者も数人の例外を除いて、ITQを支持してい る。島の加工場、漁業者組合、漁業者などに聞き取り調査をしたが、異口同音に「QMSが無かったら、漁業は無くなっていたよ」と語ってくれた。
太平洋 の真ん中の離島でも、伝統的なコミュニティーがしっかりと生き残っている。そのコミュニティーを支えているのは、補助金ではなく、漁業だ。コミュニティー は、NZ政府から経済的に独立している。コミュニティー内部では相互援助の精神で、たくましく生活をしている。彼らの生活を支えている漁業を支えているの が水産資源であり、水産資源を支えているのが、資源管理なのだ。チャタム島に関しては、いろいろ、書きたいことだらけですが、とりあえず、動画を見て欲しい。
動画のダウンロードはここから (150MB)
ブラウザーでみるには、「続きを読む」をクリック。
続きを読む →